彼「俺はいまんとこ子供欲しくないかな。」
私「…。なんで?」
彼「えー、だって、まだ自分が親になるって、想像がつかないんだよなぁ。
あとほら、子供がいる人って『子供の為だけに生きてます!』って感じするじゃん?
あれもなんか違う気がするんだよな。」
私「うーん。そうかなぁ。」
今の旦那と初めてそんな曖昧なやりとりをしたのが、付き合いだして少し経った頃。たまに子供の話になると、彼はいつも決まってそんな風に、子供は欲しくなさそうにしていて、その理由ははっきりとはわからないままだった。
そんな大切なことをあやふやにしたまま結婚した私が馬鹿だった。結婚前にもっと深く話し合っておくべきだった。
28歳で結婚して、3年経って31歳になっても、彼の煮え切らない主張は変わらなかった。
彼「俺はまだ子供欲しいと思わないかな。」
私「…。なんで?」
彼「えー、だって、まだ結婚したばかりだしさ。」
私「もう3年経つよ?」
彼「んー。あとほら、子供できるともう海外旅行とかいけなくなるらしいじゃん?最低あと1、2回は2人で海外旅行いきたくない?」
私「でも、私もう歳が歳だし。」
彼「まだ31だろ?31なら全然大丈夫でしょ。俺の会社の先輩の奥さんは35歳で出産してたよ。」
私「…。」
私は自分でもなぜだかわからないが、とっても焦っていた。人の赤ちゃんをみると、心臓に直接氷水をかけられたように胸が痛くなり、頭の中は不安という濃霧で前が見えなくなるようだった。
私と彼の仲は良かった。頻繁にではないが、セックスもしていた。
ただ、彼は子供について、このまま一生はぐらかし続けるような気がしてならなかった。
彼の両親は、離婚はしておらず、幼少期に両親からひどいことをされたりなどはしてない。
しかし、彼の母親が少し癖のある人で、母と父の両方を一人でこなすような人だ。彼の母親は、彼に「一番に友人を大切にしろ」と言い聞かせて育て、彼のことを何よりも大切にしながら生きてきたようだ。あまり表にはださないようにしているが、彼も母親のことは凄く好きだと感じる。というか、私のことより自分の母親の方が好きなのではないかと感じることがよくある。
彼の父親は温厚な人であるが、母親が父親の役割も担っているので、子供については無関心にみえる。
それから少し経つと、私自身、子供が欲しいかはっきりわからなくなった。(おそらくこうなったのは、本当は私は物凄く子供が欲しかったのだけれど、欲しくないと自分に思い込ませたら、悩まなくて済むから、自己防衛本能が働いたのだろう)
子供のことはできるだけ考えないようにしていた32歳のある日のこと
彼「そろそろ子供いた方がいいよね?」
私「…。急になんで?」
彼「だって君、もう歳も歳だし、そろそろいた方がいいよね。」
彼の中でどんな変化があったかはわからない。子供が欲しいと泣きついたわけでもないのに、ある日突然子供を作ろうと言ってきたのだった。
それからというと、思った以上に子供は簡単にできるものではなかったが、妊娠サイトの有料会員になるなど半年程あれこれ試してなんとか妊娠した。
彼はたぶん人間観察能力は高いほうの人間だ。
時々的外れなこともいうが、私の抱いている感情の揺れは、彼も敏感に感じとっているように思う。子供が欲しいと泣きついてはいないけど、心の中ではずっと泣いていたのを彼は見たのだろう。
彼の中で「子供はまだ」と感じさせていた「何か」が綺麗に解消されたから、子供を作ろうと言ってきたわけではないように感じる。その「何か」はわからないけど、(自己実現を諦めたくない気持ちや、親になる不安、まだ自分が子供でいたい甘えなんかが入り交じったもの(?))
その彼の心の奥底からする「何か」の囁きをかき消す程に、私が知らず知らずに発していた危険信号の音は大きかったのかもしれない。
おなかが大きくなってくると、まだまだ親になった実感は湧かないが、今まで感じなかった、自分の足を一歩一歩ゆっくり前進させる原動力となるガソリンのような感情がぽこぽこと湧きあがってきた。
旦那さんに子供がいらないと言われた奥さんへ
なぜ子供が欲しいかを頭で考えても答えはでない
「子供が必要な理由は~、不要な理由は~」といったように要、不要論になってしまうと、お金も手間もかなりかかりますので、楽に生きるという意味では、不要という結論になってしまいます。
特に論理的な考え方が好きなタイプの男性はこういった要、不要論を言いだしがちですが、子供をもつことのメリットデメリットなどを考えること自体ナンセンスなことです。
人間以外に自分の子孫を残すのをためらう生き物はいません。子供が欲しいという感情は、自分が死にたくないという気持ちや、家族を失いたくないという気持ちと同じで自然に湧いてくるものです。
1人の生命は宇宙の連鎖の中のほんの一部でしかありません。自分の子孫を残し、遺伝子を繋いでいくことで、大きな循環の中の一つになることができます。子供を残さないという選択はその連鎖をとめることになり、勿論それは悪いことではありませんが自然界においては「不自然」なことです。
考えすぎると出口がなくなってしまいます。子供が欲しい理由を口で説明なんてできなくていいのです。
諦めがつくまで抵抗する
前述した通り、私の個人的な意見はどんな人であろうと子供をもつべきだと考えています。もし旦那さんに子供が欲しくないと言われても、「旦那がそういうならしようがないか」といった風に自分の感情を押し殺してはいけません。
私の場合は運良く、特別なにか働きかけせずに、子供をつくることを了承してもらいました。ですが言わないとわかってくれない旦那さんも多いと思います。まずは自分は子供が欲しいという気持ちをはっきり示しましょう。
旦那さんが子供が欲しくないという気持ちは、意外とみずものです。欲しくないと言っていた人に限って、いざ子供が産まれてみるとそれまで嫌がっていたのはなんだったのかと呆れるくらい、猫可愛がりするケースは多いです。
親になってみないと本当の子供の大切さはわかりません。もしかしたら貴方の旦那さんも、子供が産まれたら親バカになるタイプかもしれませんのに、自分の気持ちを押し殺して諦めるのは勿体なすぎます。
どんなに説得しても無理だったのであれば、後になって『あの時私はあれだけ頑張ったのに無理だったから、しようがないな。』と思えますが、子供が欲しいという自分の気持ちをきちんと伝えることなく諦めてしまうと、『あの時子供が欲しいとちゃんと言っていたら今頃子供がいる生活だったのかな。』という後悔を一生背負って生きていくことになります。
仮に駄目でもよいです。諦めがつくまで旦那さんに抵抗しましょう。